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国産木材の魅力
木材利用の意義

テーマ 1

国産木材の魅力

木材は「人にやさしい」素材

木材は、柔らかくて温かみのある感触を有するとともに、室内の湿度変化を緩和させ、快適性を高める等の優れた性質を備えています。日本では古くから、住宅、日用品、道具、紙など、適材適所に木材が活用され、人々の暮らしを支え、「木の文化」を育んできました。

木材が資材として優れている主な点は「調湿作用」と「断熱性・耐衝撃性」です。
調湿作用:木材は、空気中の湿度が高いときは水分を吸収し、湿度が低いときは水分を放出するという調湿作用をもっています。これにより、内装に木材を使用した部屋では、湿度変動が小さくなります。
断熱性・耐衝撃性:木材は無数の細胞からなり、その一つ一つの細胞に空気を含んでいるため熱を伝えにくく、他素材に比べて高い断熱性をもっています。また細胞が柔軟に変形してクッションのような役目を担うため、衝撃吸収能力も有しています。

木材は、人間の心身の健康にも効果をもたらします。よく知られているのは、木の香りによる癒やしの効果です。木の香り成分(フィトンチッド)による影響と考えられており、血圧が下がった、脈拍が安定した、ストレスが軽減したなどの研究結果が挙げられています。またそれだけでなく、木の香りはダニの行動を抑制するという研究結果も出ています。癒やしの効果だけではなく、人間の健康や快適な室内環境づくりにも貢献していることが分かります。
その他にも、木材は紫外線をよく吸収するため、木材から反射する光にはほとんど紫外線が含まれておらず、目にやさしい素材という特長も備えています。

文部科学省では学校施設における木材利用についての調査を行っており、木造校舎もしくは校舎の内装木質化によって、子どもたちの学習意欲の向上や校内におけるケガが減少したという報告があります。また、木材を多く使用する校舎では、インフルエンザによる学級閉鎖の割合が低く、インフルエンザの蔓延が抑制される傾向も見られます。木材は子どもたちの心理面や健康面に良い効果をもたらすことが分かっており、学校生活全体に良い影響を与えています。

生産者の顔が見えやすい国産木材

このような「人にやさしい」木材を、木材を供給する“生産者”及び木材を使用する“消費者”それぞれが資源の持続可能性に配慮して管理、購入することができる「森林認証制度」の整備が進んでいます。FSC、PEFC、SGECといった森林認証は、適切に管理された森林から生産された木材等に認証マークを付すことにより、消費者自らが環境にやさしい木材等を選択・購買し、持続可能な森林経営を支援する制度です。

森林経営者にとっては、持続可能な森林管理によって環境保全に貢献することができ、木材加工業者にとっては、木材の産地が証明されることで環境保全に対する企業としての取組姿勢をアピールするだけでなく、製品の差別化を図ることで販路拡大が期待できます。
また消費者にとっては、認証製品を選択的に購入することができ、環境保全等に貢献できると共に、生産者の顔が見えやすく、信頼性のある木材を適正価格で購入できるというメリットがあります。

森林認証によって、その木材がどこの地域のどの森林で育ち、誰が管理したかなど、木材は単なる「資材」としてだけではなく、木が成長してきた年月や環境、木それぞれが持つ「生い立ち」が見えることで、木材に「ストーリー性」が付加されます。

全国各地で地域材の認証制度が運用されています。東京都では、平成18(2006)年4月、多摩地域で生育し、適切に管理された森林から生産された木材の産地を証明する「多摩産材認証制度」を制定しました。認証された木材は「多摩産材認証材」として流通しています。

「認証材を製材する様子」認定を受けた事業者だけが認証材として購入、加工、販売できる:イメージ
「認証材を製材する様子」認定を受けた事業者だけが認証材を取り扱うことができる

生産者と消費者を結ぶ地域材

いま全国各地の自治体及び林業や木材関連の事業者では、地域材を周知させるため、林業体験プログラムや視察ツアーなど、実際に林業や木材加工の現場を見学できるイベントを開催しています。地元で育つ木材や、そこで働く人々の想いなど「木材がもつストーリー」を積極的に伝えています。

東京の秋川木材協同組合では地元の「多摩産材」を多くの人に知ってもらうために、「東京の木 多摩産材」エコツアーを開催しています。2022年11月から一般公募を始めたところ、定員以上の応募があり、キャンセル待ちが出るほどの人気を博しているとのこと。今後は木の伐採体験なども取り入れて、今まで木材に関心がなかった人にも「とうきょうの木」を知ってもらいたいそうです。

一般の方々に木材利用の意義を知っていただき、森林資源の循環利用を促進することで、適切な森林整備を行うことができます。これにより、持続可能な国産木材の利用に繋がるだけでなく、適切に管理された森林は、豊かな国土の保全や地球温暖化の防止など、私たちの生活に様々な形で貢献します。

国産木材は、木材本来がもつ「人にやさしい」素材であると同時に、国産木材の積極的な活用が森林の多面的機能の持続的な発揮につながるなど、私たちの生活に密接する、様々な魅力をもっています。

「東京の木 多摩産材エコツアー」秋川木材協同組合が開催するエコツアーの様子:イメージ
「東京の木 多摩産材エコツアー」秋川木材協同組合が開催するエコツアーの様子