国産木材の魅力
木材利用の意義
テーマ 3
ますます広がる
「林業の可能性」
日本の林業
林業・木材産業は、森林整備と共に資源の供給や労働力の受け入れの場として戦後の日本の復興を支えてきました。しかし、高度経済成長期の終えんや外国産木材の輸入量増加により、国産木材の需要は低迷、木材自給率は平成14(2002)年に18.8%まで落ち込みました。
しかし近年、日本各地で国産木材の需要拡大を図る取組が行われ、木材自給率は増加傾向となっています。
森林は「伐って、使って、植えて、育てる」、この循環を促し、健全な森林を育むことにより、水源の涵養や土砂災害の防止、生物多様性の保全等、森林の有する多面的機能が発揮されます。
また、戦後に植えられた人工林の多くがまさに今伐り時となっています。東京都の森林面積のうち、約50%が木材として利用可能な 50 年生以上の森林である一方、20 年生以下の若い森林が極端に少ない、偏った林齢構成となっています。特に高齢の森林はCO2の吸収率が低く、またスギ花粉の飛散量が多くなります。
まさに今、森林は「育てる時代」から「伐採して利用する時代」を迎えています。
新たな使い道を拓く技術革新
持続可能な社会の実現に向け、木材への注目が高まっています。木は大気中のCO2を吸収し、木材となった後も木材内に炭素を貯蔵し続けるため、燃やさない限り再び大気中にCO2を放出することはありません。また、木材は柱や板から木質ボード、紙、さらには燃料(バイオマスエネルギー)といったように、形を変えながら何度も利用することができます。再利用して繰り返し使うことにより、環境への負荷を軽減することができます。これらの機能から、近年、木材は環境にやさしい素材、持続可能な資源として注目されています。
木材への注目、期待に応え、木材の利用を促進するためには、木材の新たな使い道を拓く「技術革新」が必要になってきます。
近年、変形しにくく、強度が高いといわれるCLT(繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料)をはじめ、火災に強い不燃木材など、木材の良さを活かしつつ、木材に新たな機能性を付加させる技術開発が増え、木材の使用用途は広がりを見せています。またそれだけでなく、従来の木材利用とは異なる「木質系新素材」の実用化に向けたさまざまな研究開発も進んでいます。
木質バイオマス素材「セルロースナノファイバー」は軽量で強度があることから、近年の巣篭もり需要で伸びている段ボールや芯のないトイレットペーパーなどの紙製品をはじめ、医薬品、化粧品など様々な分野に応用されています。
また日本固有の樹木「スギ」から作るバイオ由来の新素材「改質リグニン」は、熱に強く、加工しやすい性質から、自動車の外装部材などへの実証実験が行われています。熱変形が可能といった特徴を生かし、様々な製品の素材としての活用が期待されています。
こうした植物由来の次世代素材の開発は、新たな木材需要の創出と、環境にやさしい社会への貢献に繋がることでしょう。
これからの林業
自然にやさしく、持続可能な社会の実現に向けた動きなど、国産木材を取り巻く環境は変化しつつあります。技術革新を含めた木材需要の拡大が期待される中で、その土台となる健全な森林を維持する役割を担う「林業」の存在は不可欠です。総務省の調べによると、 林業従事者の数は長期的に見ると減少傾向で推移しており、令和2(2020)年には44,000人となっています。また林業の高齢化率(65歳以上の割合)は、令和2(2020)年は25%であり、全産業平均の15%に比べて高い水準となっています。一方、若年者率(35歳未満の割合)をみると、全産業が減少傾向であるのに対し、林業は平成2年(1990年)以降増加傾向で推移。令和2年(2020年)は17%となり、若い世代の雇用が目立っています。
昨今、各地域で地元の木材をブランド化し、地域活性化を推進する動きが活発になっています。林業や製材業のみならず、自治体や他産業が共存共栄の関係を築き、地元の木材を使ったオリジナル商品の開発やイベントの開催を行うなど、新たな雇用機会の創出にも繋がっています。
「これからは素材としてだけではなく、木への想いや木が持つストーリー、また森林についても興味を持ってもらえるような状況になってきたのかもしれません。もともと、日本人にとって森林や木材は暮らしと直結するものでしたから、原点回帰をしているのかもしれません」と、株式会社 東京チェンソーズ代表、檜原村木材産業協同組合の青木亮輔代表理事は語ります。
国産木材を活用することは、林業への大きな後押しであり、日本の自然環境を守り、地域活性化を推進することにも繋がるのです。