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多摩産材事業者インタビュー

木材のデメリットを軽減し耐久性・安全性を追求

株式会社アクト

「提案から始まり、製品完成までの長い道のりを経て、納品した現場を見に行くことが何よりも楽しみ」と語るのは、代表取締役の髙橋克明さん。実直な性格が語り口にも表れます。

同社は創業2009(平成21)年と歴史は浅いものの、神奈川県箱根町にある「箱根関所」の復元をはじめ、東京都文京区の「小石川後楽園」や、神奈川県横浜市の「三溪園」といった史跡、名勝などでも施工実績を上げています。

髙橋さんの父親は建設業を生業とし、髙橋さん自身、ときには稼業を手伝うなど幼少期から木材に親しんできました。

「木材の仕事に就きたい」と、外構施設を取り扱う会社に入社し、勤務した後に独立して「株式会社アクト」を立ち上げました。納めた製品に責任を持つことは、勤めた会社で教え込まれたといいます。

「社長の下で、営業の行い方や信頼を得る大切さを学びました。今の自分があるのは、厳しくも人間味にあふれた社長のおかげ」と髙橋さん。

進化を目指して

アクト(ACT)はアドバンスド・クリエーション・ティームの頭文字を取っており、「立ち止まることなく進化を続けたい」という思いを込めています。2013年、同社にとって、大きな進化を遂げるきっかけがありました。含浸処理を専門に行う企業、株式会社プラセラムとの出会いです。(株)アクトと(株)プラセラムが共同開発して生まれたのが、高耐久含浸木材「Imp reg wood」です。

「この木材は木の良さを保ったまま、木の弱点を補う理想的な木材」と髙橋さん。

防腐性や防蟻性を備えた亜鉛化合物を木材内部に深く浸透させ、加熱することで炭酸亜鉛にして、木材内部に固定します。含浸剤を特殊な技術で木材の内部まで深く浸透させ、固定するので効果が長期間持続するのが特徴です。

また木材に含浸剤を浸透させたあと、加熱処理により固定化し、空孔の表面を覆うことにより腐食を防ぐことが出来ます。

含浸剤の化学反応により木材は腐朽菌などが好まない物質に変化し、食害も防ぎます。主成分である亜鉛化合物は人体に害はなく、環境にも優しく、焼却処分も可能です。

無色の含浸剤を使用する炭酸亜鉛含浸処理材は、他の防腐処理をされた木材と異なり、色の変化がないため、自然な色合いを損なうことがありません。いやな臭いやべたつきなどもない、優れた処理材といえます。

木塀・木柵に多摩産材を使用

2018年6月に発生した、大阪府北部を震源とする地震におけるブロック塀の倒壊被害を受け、建築物の耐震改修の促進が進められています。東京都では「国産木材を活用した塀等の設置ガイドライン」を作成し、多摩産材を活用した木塀の設置を推奨しています。そんななか、同社では安全性と景観に優れた「削孔支柱ピン工法」を用いた木塀を提案し、販売を進めています。

「削孔支柱ピン工法」は高耐久含浸木材lmp reg woodを使い、金属製の支柱パイプを木材内部に差し込むことにより、浸水による金属部分のさびの発生や腐食を防ぎ、安全性と耐久性をアップしています。構造がシンプルな上に部品も少なく、組み立て、設置も簡単で施工コストも抑えられます。固定方法もシンプルで、木部材のみの着脱が可能な構造なので、将来的に木部材の交換も可能です。

同社では木塀、木柵、目隠しパネルなどに多摩産材を使用し、実績を上げています。「木材は自然素材であるがゆえ、腐食、シロアリによる食害などデメリットもありました。木製品は維持費、メンテナンスに費用がかかるという声も聞かれ、これまで敬遠されがちでした。しかし、含浸処理を行うことにより耐久性をぐっと高めることが可能になりました。維持費もかかりにくくなり、これからの国産木材、多摩産材に明るい未来を感じています。商品は決して安くはありませんが、ランニングコストで考えて頂ければと思います。価格よりも、信頼の置けるものを選びたいというお客様が増えています。当社は技術面、製品に誇りを持ち、これからも地道に取り組んでいきたいと考えています」

含浸工場は、豊かな自然環境を背景とした東京都多摩地域の青梅市です。地産地消の考えから、多摩産材を積極的に使うよう心掛けております。確かな技術と実績で、劣化度診断をはじめ、企画設計からお引き渡し後のメンテナンスまで一貫してお任せ頂けます。技術の進歩と共に、自然との共有を目指し、社会的な要求を遵守し、環境負荷低減に取り組んで参ります。

木材のデメリットを軽減し耐久性・安全性を追求

「含浸剤」の研究開発を手掛けて約50 年になる株式会社プラセラム。含浸剤はアルミ、鉄などあらゆる素材に活用出来ますが、同社では現在、木質材料「プラセラウッド」の高機能開発に力を注いでいます。

創業者の桑宗彦さんは東工大学で博士号を取得後、中央大学で助手として研究を続けながら、1969(昭和44)年に含浸剤の会社を立ち上げ、その後1980 年に同社を設立しました。

プラセラウッドは防燃、防腐、防虫、防臭、抗菌、調湿、断熱、防音、寸法の安定性、割れ防止などの機能を付与した木質材料です。紫外線、水、温度、シロアリ、微生物、衝撃などによる木質の劣化を防止する含浸剤の開発により、木材の耐久性を飛躍的に向上させました。同社で含浸処理をした木材は株式会社アクトを通して販売され、史跡や名勝地の外構材としても用いられています。

「初代社長の亡き夫と二人三脚でやってきました。先代が開発した含浸剤は、これまでにない特殊なもの。含浸剤メーカーとして世界をターゲットに、広めていきたい」と代表取締役の桑淑子さんは話しています。

株式会社プラセラム
株式会社プラセラム:イメージ
(左から)研究開発部部長の杉山和正さん
代表取締役の桑淑子さん
専務取締役の窪田真理子さん
  • 箱根町 箱根関所:イメージ
    箱根町 箱根関所
  • 文京区 小石後楽園:イメージ
    文京区 小石後楽園
  • 横浜市 三溪園:イメージ
    横浜市 三溪園
  • 代表取締役の髙橋克明さん:イメージ
    代表取締役の髙橋克明さん
  • 株式会社アクト:イメージ1
  • 株式会社アクト:イメージ2
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