多摩産材事業者インタビュー
多摩産材を専門に扱う東京都唯一の歴史ある木材協同組合
秋川木材協同組合秋川木材協同組合は、昭和24年に設立された70年以上の長い歴史を持つ木材協同組合です。あきる野市、日の出町、檜原村などにある林業、製材所やそれらに付随する業務を行う15の事業者から構成される当組合では、東京の木 多摩産材に関する啓発活動を含め、日頃より各方面にアンテナを張った幅広い事業を行っています。
それぞれに得意分野を持つ事業所が集まることで大きな力に
お客様からお問い合わせがあった際には、まず事務局でそれを取りまとめ、組合登録事業者のなかでもそれが得意な事業者に相見積もりを行い、委託先を振り分けています。各事業者が技術や知恵を出し合うことで、適材適所でそれぞれのスペシャリストが力を合わせて仕事を請けることになりますので、クオリティの高い仕事を提供することができ、多摩産材の可能性がより大きくなり、組合自身の幅も広がっているのです。
東京都内では所有している製材業者の少ない人工乾燥機も、組合内では8機を有し、品質検査機とともに出荷する材の品質管理を徹底。多摩産材という「産地認証」とともに、国際森林認証であるFSC森林認証とSGEC森林認証を取得することで、持続可能な森林資源の活用促進に努めています。
東京の木 多摩産材の森林資源を大消費地・東京で使う=都産都消することは、森を守ることだけでなく、東京都内の水や空気を守ることにもつながります。設立から70年超が経過し、後継者問題に直面する事業者もある私たちですが、東京都や地元のあきる野市とも連携し、新しいことにも挑戦しています。
具体的な活用事例を増やし、さらなる活用へ
私たちは単に製材品を流通させるだけでなく、様々な活用事例を積み重ね、提案することで、新たな需要を生み出す努力を行っています。都内では数多くの駅舎やにぎわい施設などの構造材、保育園・幼稚園などの教育施設の内装材や什器・遊具、さらには、店舗で使用されるカウンターやテーブルなどの事例があります。出荷する際には、「森― 林業者― 原木市場― 製材所」を記載した「出荷証明書」を発行し、徹底した産地認証を行うことで、施主様に安心してご活用頂いております。
エコツアーやマルシェへの出店、出前授業など、顔の見える地元材の伝承を
私たちは、教育分野とのコラボレーションや、東京の木 多摩産材の認知向上など積極的に取り組んでいます。例えば地元の小中学校や高校に出向いて行う多摩産材出前授業、多摩の森に触れるエコツアーで生産者の顔が見える産地体験会などの開催を通じて、地元産材の理解とともに、今後就労先として検討できる機会の創出を行っています。
また、多摩産材をはじめとした地元物品のPRイベントとして始めた「五市マルシェ(JR武蔵五日市駅前にて毎月第3土曜日開催)」などにも出店し、暮らしのなかに少しでも取り入れやすいよう商品開発したヒノキのコースターや鍋敷き、まな板やキーホルダーなど、多摩の森の木のストーリーを感じられる多摩産材製品をリーズナブルな価格で販売しています。
東京に一番近い森が多摩産材のふるさと
多摩産材の森は、東京都内に在勤在学在住の方にとっては一番近くにある森です。新宿からバスで1時間半ほど、そこから5~10分で森に到着します。世界でも大きな都市である東京の身近な自然や森に触れ、50~60年前から育つ多摩の木を思い、感じて頂けたらと思います。
東京の木を東京で。木は、その育った土地で使われることでその気候に合った場所に立つ建物などに活用されることで、伐った後も二酸化炭素をその木材のなかに固定し、2度目の人生を歩みます。配送時に出される二酸化炭素も少なくて済み、環境経済社会の観点からもとても有効です。
多摩産材の直営店「素木家(そぼくや)」や地元産の料理を楽しめる店舗でさらに多摩産材の魅力を知る
私たちは、製材所で加工された製材品のなかでも端のほうであったり、寸足らずなどのいわゆる「端材」を、手に取りやすい価格で購入できる直営店「素木家」でご提案しています。「素木家」では、端材のみならず、大きな一枚板なども、無垢材にはありえない価格で購入することができます。ホームセンターなどでは買えない耳付き(樹皮部分の付いた)の板もあり、DIYをされる方や自然素材に癒しを求める方にご好評頂いています。昨今ではコロナ禍による生活環境の変化から、リモートワーク用のテーブル天板や断捨離後の整理棚、自宅スペースに床板としてなど、地元の材を使いたいと多くの方が訪れます。
また、隣接する日本料理店「木(こ)のか」は多摩産材モデルハウスを活用しており、駅前で展開する地元企業のレストラン「kitchen CANVAS」や「Do-mo factory blan.co」では、多摩産材を内装外装にふんだんに使い、木の香りただようなかで地元秋川の旬の食材を楽しむことができます。このコンセプトに魅力を感じて下さったお客様がリピーターとして訪れ、多摩産材に興味を持って頂くきっかけにもなっています。
多摩産材の価値を伝え、選ばれる木材に
「東京の木 多摩産材」というと、土地代や人件費などを含めて、相互的に価格の面で厳しいとのお声を頂戴する場面もありますが、これまで具体的な取り組みでご一緒した方々とは、私たちが持つ物語を含めた取り組みに共感頂いたものが多くあります。ウッドショックを契機として、SDGsの観点からも国産木材へ移行を検討する企業が増加しています。そのなかでも、地域産材は歴史と流通にストーリーがあります。そのきっかけ作りとして、産地体験会であるエコツアーや様々なイベント、物販にも取り組んでいます。
多摩産材の魅力に「気づいて、知って、選んで」頂く。これからもこの流れを加速させ、秋川木材協同組合の総合力を発揮してまいります。