多摩産材事業者インタビュー
ノンケミカルな処理で耐朽性向上地球環境にも優しい木材を提供
江間忠木材株式会社東京都中央区晴海に本社を置く江間忠木材株式会社の玄関には優しい色合いの木材が施され、お客様をあたたかく迎えます。
「当社は木を扱う会社として、皆様により良い生活空間を提供していきたい。そんな社の気風をこの木材から感じて頂けたら」と同社エコライフ事業部前野晋史部長は話します。
江間忠木材株式会社は1923(大正12)年、江間忠蔵氏が創業した株式会社江間忠ホールディングス(現)のグループ会社として1958(昭和33)年に設立しました。グループの中で、木材・建材流通事業を担っています。
「木材に関するあらゆる分野ごとにプロがそろっているので、木のことなら何でも江間忠に聞いて欲しい。原木、製材、外装、内装すべてお任せ下さい」
窒素加圧加熱処理材の利点
同グループの事業内容は建築資材、産業資材の販売、建築工事の請負、設計、監理、原木、木材、合板の輸入販売など幅広いですが、同社は窒素加圧加熱処理材「エステックウッド」のメーカーとして販売を行っています。
エステックウッドは、宮城県産業技術総合センターが行った人工埋木(うもれぎ)の研究から誕生した改質材です。窒素加圧加熱の純国産技術を用いて製造されるエステックウッドは燻煙方式とは異なり、木材の中心部までナノレベルで改質がなされ、ノンケミカルでありながら、防腐性、形状安定性、断熱性を実現しています。ウッドデッキ、ルーバー、フェンス、外壁、軒天、ガーデン枕木などの外構、外装材として適する環境循環型の改質木材といわれています。
「これまで日本では薬剤を使って防腐、防蟻、腐朽菌を防いできましたが、薬品を使うことなく、220℃という高温で熱処理することにより虫や腐朽菌に侵されない材質に変化させています。切断面でも防腐能力が変わらないので、施工性も良く、外構部に最適な木材です」と前野さん。
施工事例として最も古いものは1990(平成2)年に造られた木道。国産木材に処理を施したガーデン枕木は地中に埋め込まれて30年が経ちますが、現在も良好な状態を保っています。
「防腐性能という点ではルーバーであれば50年以上、軒天であれば100年はもつだろうといわれています。高熱で処理しているエステックウッドは軽いという特徴もあり、施工の際も業者の方々に好評です」
多摩産材の事例も増加
地震の際ブロック塀が倒れ、大きな事故につながった他県の事例などにより、都内でも塀やフェンスの木質化が進められています。国立高校など都内の高校のプールサイドのフェンスにエステックウッドが用いられる機会も増えてきました。
多摩産材の利活用も増加しています。2020(令和2)年、立川市にオープンした商業施設「GREEN SPRINGS」にも、窒素加圧加熱処理を施した多摩産材を納材しています。木道やウッドデッキ、テラスに使われた木材の醸し出す優しい雰囲気が好評で、緑あふれる広場を中心とした開放的なショッピング空間は小さな子ども連れのファミリーや女性たちの人気を集めています。
また、横浜市にある上野町教会、出雲大社など宗教界の建物にもエステックウッドの使用が増えているそうです。
「化学的な薬品を使わず、自然素材であることが評価されているのではないかと感じています。小さなお子さんやご高齢の方にも安心です」
「木材という天然素材を使って社会に貢献出来るというのが魅力です。木という物理的な存在が好きですね。木は一年でひとつ年輪が増える、そんな地道さが自分の気質に合っている」と前野さん。
同グループでは創業80周年を迎えて以降、静岡県、愛知県などに社有林を増やしてきました。
「それまでは輸入材の扱いが多かったのですが、国内の森林を育成し、山を守り、目先の利益だけではなく、国土保全のためにも国産の木材を育てていくことにシフトしてきました。江間忠グループの総合力をもって、社会に貢献していきたい」と前野さんは語ります。
耐朽性が高く、長期間に渡りCO2を固定化するエステックウッドの利用の場を広めることで地球環境を守り、SDGs の課題解決にもつなげたいと同社は考えています。