多摩産材事業者インタビュー
50年60年の長いスパンで考え山の資源をはぐくみ活かす
株式会社フォレスト西川飯能駅から車で走ること20分ほど。飯能市阿須にある株式会社フォレスト西川の第2工場とモデルハウスを兼ねる事務所を訪ねました。
事務所に一歩足を踏み入れると、やわらかな木の香りに包まれます。訪ねた冬期には端材を使って薪ストーブが焚かれ、事務所内は穏やかなぬくもりに満ちています。足元の床材も優しい肌触りで、木の家の良さが伝わってきました。
株式会社フォレスト西川の創業は1995(平成7)年、それまで地域で木材業を営んでいた4社と西川地区の広域森林組合とが手を携え、同名の協同組合を立ち上げました。
西川地区の木材は江戸時代から知られ、江戸の大火の際には、この西川地区の木材が復興に用いられました。西川材の名の由来は、荒川の上流、入間川、高麗川などの川を使い、この地域の木材を筏に組んで流送していたことから「江戸の西の方の川から来る材」という意味で「西川材」と呼ばれるようになったといいます。
長い歴史を持つこの西川材を全国にPR し、力を合わせて情報を発信していこうと株式会社フォレスト西川が設立されました。
木の魅力を発信
事業のひとつが地元で育った木材の乾燥、加工、プレカット。時間と手間をかけ、ゆっくりと乾燥させた天然乾燥材も常時ストックされています。一方、蒸気式の乾燥を施して一気に乾燥させることで、木材の反りや割れを防ぐ方法も取り入れ、品質の向上に努めています。
同社のコンセプトは「一軒丸ごと木材を使う家を造る」。材木のプロが選び抜いた木材を適材適所に用い、末永く木の良さを感じてもらう暮らしを提供することを目指しています。内装はもちろん、家具、建具、外装まですべてのシーンで木材を使うメリットを提案しています。
商品としてはスギ、ヒノキの構造材、壁床材に用いる加工板、無垢の一枚板に最も近い集成材「巾ハギボード」「巾ハギパネル」、国産木材のスギ、ヒノキを使った階段のプレカット加工材、木製建具、玄関ドア、木製サッシなど多彩な製品を提供しています。
フォレスト西川と不燃処理メーカー「株式会社ARS」が提携して生産している、国産のスギやヒノキを使った不燃処理材も性能の良さが買われています。
地域の木材を使う利点
フォレスト西川では、西川材と同様に多摩産材の良さも高く評価しています。
「多摩地区は古生層からなる褐色森林土で、平均気温が12~14℃、平均降水量が2000㎜、比較的温暖な気候で地質、気候ともスギ、ヒノキの育成に適しています。木の強度も木材の強さを測る指数であるヤング係数が全国平均より高いんです。ヤング係数の全国平均が70ぐらいであるのに対し、西川材・多摩産材の係数は80~90あります。強度が高いということはたわみにくいということ。変形しにくいという利点は大きいと思います」と代表取締役の原昌彦さんは話します。
同社では地域の良質な木材を使うことにより、地域の気候に合った耐久性の高い建造物を造ることが出来ると考えています。
「地元の木材は地元の気候に合い、長持ちします。また地元の樹木を伐採し、育てるというサイクルにより、自然環境の循環と浄化が行われ、私たちの暮らしもより快適なものになると考えています」
今後の展望
これまで住宅の建設などに力を注いできましたが、これからは保育園や幼稚園、公共施設に納める家具や遊具、エクステリアに力を注いでいきたいといいます。
劣化の進んだブロック塀に変わる新しい塀としてウッドフェンスが注目されていますが、同社でも大阪府高槻市に本社を持つ「港製器工業株式会社」と提携し、多摩産材とアルミをコラボした目隠しフェンス「スーパーフェンス-α」と「スーパーフェンスライト」を開発。木の持ち味を活かし、耐久性に富んだ製品を提供しています。
原さんの息子で営業を担当している原政人さんは「祖父、父の姿を見て育ち、木材が身近にあったので自然にこの道に入りました。衣食住の中の住に関わる仕事で、お客様に喜んでもらえることが嬉しい。林業や木材業に若い人がどんどん入ってきてもらえるようになるといいと考えています。若手に技術や知恵を継承していく必要があります。これから遊具や外構材などにも力を入れていきたいですね」と笑顔で話してくれました。