文字サイズ

多摩産材事業者インタビュー

森の文化と都市をつなぎ自然との共生を目指す

越井木材工業株式会社

大阪に本社を構える越井木材工業株式会社の歴史は、江戸時代の木材商から始まります。明治時代には電柱を逓信省に納めるなどし、1900(明治33)年に「木材の防腐注入処理工場」を建設しました。同社の設立は1948(昭和23)年。電柱や枕木などを製造して戦後の復興に尽力し、2021(令和3)年で創業73年目を迎えました。

都市に森の恵みを活かす

「木材はサスティナブルな素材です。建物に木製外装材を使うと、都市部におけるヒートアイランド現象を緩和するなどの効果も認められており、木材は都市生活における様々な課題解決の一助になると考えています」と越井潤代表取締役社長は話します。

同社のコンセプトは「地産外消」。

付加価値を付けた木材を需要の多い都市部で使用することにより、山間部へと還元し、森林保全、林業活性化へつなげようという考え方で、都市と山間部の共存共栄を目指します。

3部門での事業展開

同社は大きく分けて3つの事業を展開しています。

ひとつ目がケミカルな防腐処理、保存処理の部門です。住宅の防腐処理土台をはじめ、例えば浴室などの水回りに用いる建築資材に耐久性を高めるための様々な処理を施しています。

2つ目が薬剤を使わず耐久性を高める新たな技術の開発、施工の分野。人と環境に優しく、より安全性の高い技術として「サーモウッド」を用いた建築資材を製造し、エクステリアでの活用を広めています。外構景観商品としてウッドデッキ、フェンス、サーモウッドルーバーなどがそろっています。

3つ目が電車、トラックの床板など車両関係の分野です。同社が持つ木質と金属との接着技術を活かし、加工された木材が電車のパネルや床、間仕切りなどに活用されています。

1970年から開発を進めてきた防火の技術も高く評価されています。2020(令和2)年には新たな防火木材「スーパーDパネル」の発売を開始しました。さいたま市大宮区役所、大宮図書館などをはじめ、同社の「準不燃木材」「不燃木材」を用いた施設も増えています。

多摩産材を使ったサーモウッド

近年、同社が力を注いでいるのが、高温熱処理を施し、環境に優しい高耐久木材「コシイ・スーパーサーモ」です。国産の植林木を用い、日本の環境に適するよう熱処理を行うことにより、従来の木材に比べ腐りにくく、耐久性の高い品質を保つことが出来ます。熱処理により、寸法の安定性も向上し、反りや曲がりも大幅に抑えられます。何よりも、地域の木材を使うことが出来る点は魅力的です。

多摩産材を用いたサーモウッドも製造され、屋外で使えるイスやテーブル、ベンチなどに生まれ変わっています。

同社の保存処理の技術は長期間の使用に耐えると同時に、今まで使いにくかった場所に木材を使うという可能性を広げています。屋外での用途が増え、内装から外装まで幅広く木材を使えるようになりました。そして外装に木材を使用する際の、腐る、反る、曲がるという欠点を克服する技術の開発を同社の使命と位置付けています。

ユーザーの傾向として、近年では天然木などの木質建材への需要が高まり、より自然な素材が好まれるようになってきたといいます。化学的なものが増えることにより、シックハウスなど現代の疾患が生まれているのではないかという懸念を、消費者が感じているからではないかと同社では分析しています。

「東京都のユーザーに多摩産材を使って頂きたいと考えています。当社の多摩産材サーモウッド(水蒸気式高温熱処理木材)は熱処理だけのノンケミカル材で、地球と人に優しい素材です。外部で使っても20年の耐久性があり、割れも曲がりもほとんど起きません。エクステリアの木質化が進み、用途が広がってきました。

当社からの提案、アドバイスなども出来ますので、気軽にご相談下さい」と越井社長。

土地の4割を森林が占めているという東京。「安ければ良いという考えではなく、森林と共に我々の暮らす環境を守るためのコストという観点がこれからは大切になると思います。山間部の森の価値を見いだし、東京都市部の環境をより良くし、森をさらに豊かにしていきたい」という越井社長の言葉に、同社のポリシーが伝わってきました。

  • JR青梅線 軍畑(いくさばた)駅:イメージ
    JR青梅線 軍畑(いくさばた)駅
  • 代表取締役社長の越井潤さん:イメージ
    代表取締役社長の越井潤さん
  • Park Community KIBACO:イメージ
    Park Community KIBACO
  • 下駄箱:イメージ
    下駄箱
事業者紹介ページはこちら