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多摩産材事業者インタビュー

エコアコールウッドを活かし木化都市の実現に貢献したい

九州木材工業株式会社

「当社の強みは社員とオリジナル商品」と言い切るのは九州木材工業株式会社の角博(すみひろし)代表取締役社長。

「会社は社会の役に立つ人間を育て、生きる力を学ぶ場所と考えています。一人一人が仕事に集中し、社員が一体感を持ってことに当たっていくチームプレーを得意としています。仕事は人と人の間に成り立つものだから、最後は人が勝負。社員にもやる気と、意識の高さがあれば何事にも負けないと伝えています」

高校時代からラグビー選手として活躍し、早稲田大学のラグビー部では主将も務めた角社長ならでは。会社はワンチームという思いが、同社の根底を支えています。

九州木材工業株式会社は2020(令和2)年、創業90年を迎えました。日本に電気が普及しはじめた頃、個人商店としてスギを使った電柱の製造を開始したのが同社の基礎を築いた角商店です。昭和に入り、日本に木材の薬剤処理の技術が伝わると、1930(昭和5)年、九州木材工業株式会社が誕生しました。素材としての電柱に防腐、防蟻処理を施すという新たな事業へのチャレンジでした。

1941年からは防腐、防蟻処理を施した枕木の販売を開始。薬剤処理枕木は全国の鉄道に普及していきました。

「創業当時より、木を活かしてのインフラ整備、人命と環境を守ることが当社の使命と考えています」と角社長。森林の保全、伐採など林業関係は角商店、木材加工、製造、販売は九州木材工業株式会社と分業し、現在に至っています。

エコアコールウッド®(低分子フェノール樹脂処理木材)の誕生

昭和50年代、戦後に植林されたスギやヒノキが成長する一方、輸入される外材に押され、国産木材の利活用が低下し、日本の山林の荒廃が危惧される時代となり、放置された間伐材の利用が課題となりました。間伐材に付加価値を付けようと産官学で手を携え、研究を続ける中で生まれたのが「エコアコールウッド」でした。同社の強みのもうひとつが、この「エコアコールウッド」です。

「九州大学農学部林産学科の樋口光夫教授(当時)の基礎研究をもとに、九州木材工業、福岡県工業技術センターインテリア研究所、九州大学大学院農学研究院の共同開発により、「エコアコールウッド」が完成しました。特許、AQ認証も取得して人気の処理木材に成長しました」

同社はエコアコールウッド(低分子フェノール樹脂処理木材)、国内唯一の生産メーカーです。

エコアコールウッドが選ばれる理由

「エコアコールウッド」は木材を細胞壁レベルで樹脂化することにより、シロアリや腐朽菌から木材を守ります。木材に薬剤を浸透させる従来の保存処理方法と異なり、薬剤が溶け出す心配もなく、安全性が高いといわれています。

「エコアコールウッド」の採用実例の中には、15年以上経過した物件も多数あり、長期に渡る耐久性が実証されています。

保存処理木材の劣化は割れから生じる可能性が高いことが指摘されていますが、「エコアコールウッド」は樹脂を注入することにより木材の細胞壁を固定しているので、割れにくい特徴があり、木材の劣化を防ぐことが出来ます。

「エコアコールウッド」は2010(平成22)年より毎年、世界文化遺産である厳島神社の束柱、土台として納材されています。これは同材がフナクイムシに強く、海虫類による穿孔(せんこう)がないという点が評価されたことによります。施工された同材の回りにはフジツボなどの生物が付着し、同材が無毒であり、環境に優しいことも検証されています。

「ここ数年で公共施設に国産木材を使う流れは進んでいます。木に囲まれて暮らすことは子どもたちにとっても、地球環境的に考えても良いことだと一般の方々にも理解されるようになってきました。東京での施工には地域の国産木材である多摩産材を使いたいと考えています。ご希望に添うよう努めます」と角社長。

同社では不燃薬剤の処理にも成功し、現在、不燃処理材を販売する準備を進めています。

「都内の高層ビルに木材を使うにあたって不燃処理は重要なポイントです。木材の持つ優しい色合いや感触を活かすには、外装材など見える場所を木質化していくことが大切だと考えています。ビルなどの木質化に尽力し、木材の利用拡大に力を貸し、木化都市を作ることに貢献していきたいですね」

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    代表取締役社長の角博さん
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