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多摩産材事業者インタビュー

東京の森の魅力を地元から子どもたちに届けたい

株式会社東京・森と市庭

「子どもたちが森となかよしになることを目指しています」と話すのは株式会社東京・森と市庭営業部長の菅原和利さん。

同社は2013(平成25)年、東京都西多摩郡奥多摩町で産声をあげました。山林を守ってきた林業家や、都市の暮らしに奥多摩の木を届けたいと考える企業などが手を携え、立ち上げました。

当初から地元の多摩産材にこだわり、多摩産の木材製造、販売をしてきましたが、現在は木育に焦点をしぼり、木育遊具の製造販売と共に、木育体験の機会を提供しています。根底にあるのは子どもたちへの想い。

「子どもたちには無垢材の木製品や自然に触れることで、五感を開き、センスオブワンダーを磨いて欲しい」と菅原さんは話します。

奥多摩が大好きで移住

菅原さんは海が近い神奈川県小田原市の生まれ。法政大学の「人間環境学部」に在籍した学生時代、奥多摩地区をフィールドワークし、地域に暮らす年配者たちに山の暮らしについて話を聴いて回りました。山村に暮らす人々と交流する中で、奥多摩の自然と人々に魅せられた菅原さんは、大学を卒業した2010年、奥多摩町に移住しました。翌年、奥多摩で起業し、同社の立ち上げに関わってきました。

「奥多摩が大好きなのでこの地域のために何かをやりたいと考え、この仕事と出合いました。奥多摩の森や山の魅力を伝え、多摩産の木を大切にしてくれる人に届けたい」と菅原さん。

同社の夢は多摩産材の遊具を手掛けるメーカーとして、全国に多摩産材の魅力を届けること。製造しているのは保育園や幼稚園を対象にした木育遊具全般ですが、遊具を届けるだけではなく、遊具がどんな木からつくられ、その木はどんな山で育ったのか伝えることにもこだわっているといいます。

そのために、園庭に遊具をつくる場合は、現場に木材を持ち込み、園児たちに組み立てる様子を見てもらうように心掛けています。

「製作の過程を子どもたちに見てもらい、木から遊具が作られ、ものというのはこんな風につくられていくのだということを知ってもらいたいのです。つくられていく様子を目にすることで、子どもたちが木に関心を持ち、遊具を大切にする心も育てばいいなと思います。木からものが生まれるストーリーを伝えたいですね」

多摩産材の魅力は節

多摩産材の魅力のひとつは節が多いことだと菅原さんはいいます。ともすれば節が多いことは難点にもなりますが、子どもたちが遊ぶという観点から見ると、節があることが逆に魅力となります。子どもたちは木の節から動物の目を想像したり、節穴をのぞくなどの遊びを展開していきます。節は枝の跡で、枝先には緑の葉が繁っていたことを伝えることにより、より身近に木を感じてくれるといいます。

「遊びという視点から多摩産材を見ると、とても魅力的な素材です。木で遊ぶという視点を持つことで、植林された木々を有効的に使い、より豊かさを感じてもらうことが出来るのではないか」と菅原さんは考えています。

林業のエンタメ化を企画

「これまで企業や個人に向けて木材を販売する際、森林を守る大切さなど啓蒙的な伝え方をしてもロジックでは響かなかったことが、コロナ禍を経て、五感を通して伝わるようになったと感じています。コロナが人の意識や価値観を変えたのかもしれません」と菅原さん。

都会の人々の間に自然志向が広がり、奥多摩の自然や森林に興味を持つ人が増えてきました。

「森とあそび・木とくらす」をコンセプトにしている同社は、保育園や幼稚園の園児たちや小学生などに森を提供し、遊びや山林の仕事を体験するプログラムも提案しています。

そのひとつが木と森を使った遊びと学びの祭典「モクリンピック(木輪ピック)」。

間伐体験や丸太転がしなどのゲームを通して、森や木を感じ、自然を学んでいきます。

「林業は木材を売るだけでは前に進めません。森の価値を伝えると同時に、もっとたくさんの方々に森や木を楽しんでもらいたい。コロナ禍をきっかけに、東京の森に目を向けてくれる人が増えたので、林業のエンタメ化をはかっていきたい。

SDGsを大切に考える保育園や幼稚園、企業と寄り添いながら走っていきたいです」

  • 多摩製材加工所:イメージ
    多摩製材加工所
  • 花の木保育園 ウッドテラス:イメージ
    花の木保育園 ウッドテラス
  • 正和幼稚園園庭 ティピ:イメージ
    正和幼稚園園庭 ティピ
  • 営業部長の菅原和利さん:イメージ
    営業部長の菅原和利さん
  • 書籍紹介『自分の地域をつくる―ワーク・ライフ・プレイ ミックス』(本の種出版):イメージ
    書籍紹介
    『自分の地域をつくる―ワーク・ライフ・プレイ ミックス』(本の種出版)
    2021(令和3)年1月に発売された、菅原和利さんの著書。株式会社東京・森と市庭は、どのように成長してきたのか?これまでの歩みを紹介しています。
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