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多摩産材事業者インタビュー

外置きされた木槽の美しさで暮らしを支える木の姿を伝えたい

日本木槽木管株式会社

江戸時代の末、安政年間に開港した横浜港を抱え、明治時代に入ると、港を中心に急速に発展を遂げた横浜。近代化も全国に先駆けて進み、天秤棒で「水売り」が行われていた時代に、日本で初めて水道が引かれたのも横浜市です。

当時、送水に使われたのは国産のスギでつくられた木管の水道管。この木管の製造に携わったのが「大日本水道木管」で、1912(大正元)年に創業しました。

1927(昭和2)年、同社は日本木槽木管株式会社と社名を変更し、耐酸、耐アルカリ用木槽の製造、販売を開始し、現在に至っています。

主力商品は木製水槽

ステンレスなどの素材がなかった時代、酸性やアルカリ性の化学薬品を入れても腐食しにくく、錆(さび)が出ない木槽は重宝されてきました。転機が訪れたのは1964年に開催が決まった東京オリンピックでした。観光客が増え、諸外国との往来が見込まれる中、各ホテルでは上質な水を大量に貯水するにはどうすればよいか思案し、ホテル関係者は米国などへ視察に行きました。ニューヨークの摩天楼の屋上に設置された木製の貯水槽を目にした関係者は、日本でも醤油樽や味噌樽などの「木の文化」があることに気づき、木槽の製造を続けてきた同社にオーダーを入れました。都内の著名なホテルなどから次々と注文が入り、木製の貯水タンクや受水槽の製造が始まりました。

水の鮮度を保つ木槽

「木製だと材質が弱く、腐ったりしないのかと思われがちですが、木製水槽は耐久性、耐震性、安全性に優れ、保温性も高く、地球環境にも優しいなど多くの利点があります」と話すのは同社営業第二部課長の高橋正範さん。

同社の木槽は地域で産出される国産のスギ材を用いています。その地域で育ったスギは地域の環境や気候に合っているので、耐久性が高いと考えられています。

70㎜程度の厚みを持つスギ材からつくられる木槽は外置きしても外気温に左右されず、貯水温は一定に保たれます。また木自身の抗菌能力と相まって、水の鮮度も保持されやすいといいます。木槽の内側は漆が施されており、漆(うるし)チオールの抗菌作用も加わり、水質の安全性が一層高まります。

木槽の組み立ては、漆を塗装した木材を設置する場所に持って行き、腕利きの職人が手作業で行います。接着剤などは一切使わず、底板、側板を噛ませて建てていくという伝統的な手法なので、化学的な成分が水に流出するなどの危険性は全くありません。

東日本大震災の際、福島労災病院に置かれていた木製水槽や仙台市東北労災病院の地下受水槽には、漏水や破損などの被害はありませんでした。実験でも耐震性が明らかにされ、災害にも強いことが実証されています。

「当社の強みは木槽のサイズなどどんなオーダーにも応えることが出来るところ。

羽田空港にも高さ5m、直径が10m を超える最大級の木槽を納めていて、空港を利用する方々の飲み水を支えています」

多摩産材を木槽に活かす

最近では、多摩産材を使った木槽の受注も増えてきています。慶應義塾大学三田キャンパス内に納めた受水槽、あきる野市営温泉の木槽、都内中学校などの受水槽にも多摩産材が使われています。

「木槽には耐久性を鑑みてスギの赤身がかった部分を使いますが、多摩産材は他の産地のものと比べ、赤みが濃いという印象で、耐久性に富んでいます。木槽はその地域で育った木材を使うようにしているので、東京では必然的に多摩産材を使用することになります。その地に生息していた木を使うことで、木の持つストーリーも伝えていくことが出来るのです」と高橋さん。

内部に置かれることが多かった設備器機ですが、最近は外に置かれることも増えてきました。千代田区の施設では散水設備に自然素材を使いたいと考え、木槽と出会いました。屋外のテラスに木製の雨水槽を設置し、窓越しに木槽を眺めることが出来るようになっています。

「自然素材を求める声が増えているのを感じます。東京の森の木を使うからには少しでも目に付くところに設置してもらえると嬉しいですね。多摩産材がどこでどう使われているか、どのような形で生まれ変わり、生かされているのかを皆さんに知って頂きたいのです。木材が我々の生活とどう関わり、支えてくれているかを木槽という形で伝えていきたい」と高橋さんは語ってくれました。

  • 新城工場:イメージ
    新城工場
  • 営業第二部課長の高橋正範さん:イメージ
    営業第二部課長の高橋正範さん
  • 側板の断面:イメージ
    側板の断面
  • 側板と底板のつなぎ部分:イメージ
    側板と底板のつなぎ部分
    側板の一本一本に欠き込みが施されており、底板に噛ませながら側板を建て込んでいきます。側板と底板の厚みは、容量によって70㎜程度で、接合部に接着剤などは一切使用しません。
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