多摩産材事業者インタビュー
先祖が大切に育み残してくれた檜原の木々1本1本を無駄なく活用することは社会貢献にもつながる
野村材木店檜原村の山主のひとりでもあり、伐採から製材、住宅建築やリフォームまでを一貫して請け負っている野村材木店。正確で丁寧な仕事をモットーに、関東の気候と風土に合った多摩産材を使った在来工法で、新築からリフォームまでを行っています。さらに、7~8年前から間伐材や端材を利用した木製品づくりにも取り組み始めました。
間伐した木まで無駄なく有効活用することが良い循環を生み出す
私が子どもの頃、この地域の家の多くは林業など山の仕事で生計を立てていました。
私も先代や近所の大人たちが懸命に山仕事に汗を流す姿を見て育ちました。あるとき、100本以上のヒノキを間伐してそのまま埋めてほしいという依頼を受けました。せっかくの木を無駄にしてしまうのは忍びないと、依頼者に頼み込んで引き取ると、それは美しい木目のヒノキでした。先代やご先祖様が一生懸命育ててきた森の木を、そんなふうに粗末に扱うわけにはいかない。何とかこれを活用して、商品化できないかと考えたのです。
間伐は森の木の育ちを良くし、地球環境も改善します。間伐した木を製材し、商品化して世に出すことができれば、森を元気にするために次の間伐をする資金も生まれます。さらに、捨てるはずの木を引き取って薪にしたり、この地域の生態系について研究し、モミの植林に取り組んだりもしています。
多摩産材・檜原村の木には限りない可能性がある
野村材木店で間伐材に新たな命を吹き込んだ木製品は、茶椀やコップ、タブレットスタンド、ネームプレート、カード立てなど。小さな端材は携帯ストラップに、削り取ってできた薄い木は集めてリースにと、無駄なく使うことを心がけています。
手作業で作っているので器などはどれも少しずつ形が違います。また、木目も同じものはひとつもありません。オンリーワンの木目、世のなかに1個しかない商品だということに価値を感じる方に使って頂きたいです。檜原村のスギやヒノキを活用した木製品のことを考え始めると、どんどんアイデアが湧いてきます。野村材木店の商品には、国産木材のノベルティにこだわるFRONTIER JAPAN株式会社などからの引き合いも。また、ヒノキのブラインドなど、実際に檜原村の村役場で使用されているものもあります。
日本に木の資源がたくさんあるのに海外から輸入したり、環境に負荷をかける石油製品を大量生産して次々と捨てたり、という風潮を変えたいと思っています。木はいろいろな形で世の中に貢献できる素晴らしい素材です。建築材にならなくても、他にもたくさん木を活かす方法があります。捨てられるはずだった木を無駄なく使うことで、無限の可能性が生まれます。一つ一つに温かみがある木の良さを伝えていきたいと思っています。