多摩産材事業者インタビュー
強みは職人たちの技木を通して人を幸せに
有限会社たくみまさの「代々、木とつき合う中で培ってきた知識と経験を活かし、皆さんに木の良さを伝えていきたい」と山形県最上郡金山町で有限会社たくみまさのを営む正野直弥さんは話します。
祖父の代から木材の仕事に携わり、父正剛さんが製材所を立ち上げ、ブナの製材、婚礼家具などの製造を始め、1981(昭和56)年、有限会社たくみまさのを創業しました。ブナ林の保護活動が行われるようになり、ブナの製材からスギの間伐材の利活用へと事業はシフトしていきました。
現在は間伐材の有効利用をモットーに、治山、河川、公園、建築など幅広い分野で企画、設計、施工まで提案を行っています。
1996(平成8)年には防腐加圧機を導入して、環境に配慮した防腐剤を加圧注入し、防腐、防蟻効果に優れた製品の販売も行っています。スギの間伐材が増え、有効利用出来ないか試行錯誤する中から生まれたのが木製景観舗装材、「木レンガ」でした。
木レンガには、ユニット式のウッドロックと単体型のインターウッドの2種類があります。インターウッドはスギ材単体であるのに対し、ウッドロックは木で樹脂を挟み込んでいます。
「ビルの屋上やテラスに敷き詰める、通路に敷くなどにより、夏場のヒートアイランド現象の緩和につながります。木質なのでクッション性があり、やわらかく、転んでもケガが少ないなどの長所があります」
施工例として国立科学博物館上野本館や東京都町田市図師小学校の中庭、東京都妙正寺川鷺宮調整池遊歩道など、屋外での使用例が多数あります。
ウッドロックの施工から20年経ったJR新庄駅にある広場「ゆめりあ」の床は落ち着いた風合いが好評です。
「木レンガは敷き詰めると石畳のような味わいが出てきます。ヨーロッパの石畳のような雰囲気に仕上がり、木を活かしたレンガとして愛用されています」と正野さん。
同社はどんな仕事も断らないことを旨としており、何十年と木に関わってきた職人の技が強みだといいます。
「親父をはじめ、先輩たちから教えられた木の知恵、知識があり、蓄積があります。長年の積み重ねと一つ一つのご縁を大切にしてきた結果、今があります」と正野さんは話します。
多摩産材の魅力は確かな品質
木レンガにも多くの多摩産材を使ってきました。東京都森林組合から届く多摩産材には盤石の信頼を寄せているといいます。
多摩産材を用いた施工例では豊洲運河にインターウッドで護岸歩道を造り、優しい印象の風景が完成しました。
「奥多摩には立派なスギやヒノキがあり、品質も安定しています。節も案外少なく、丁寧に育てられたことが分かります。木質がやわらかいスギは防腐剤が浸透しやすく、外装材としておすすめしたいです」
同社の夢は、東京を筆頭に木質化が全国に広がること。関東に協力会社を募り、同社の技術やノウハウを伝えてPR や営業、製造を行うグループ組織を作りたいと考えているといいます。
「木で作れるものは木で作ろうよ、と思うのです。大きな公園の柵や欄干などに擬木が使われているのを見ると残念に思います。ウッドロックやインターウッドを製造、販売するうちのような会社が各県、都にあってもいいのではないかと考えています。ノウハウを共有し、提携出来る会社と協働していきたい」と正野さん。
木を通して若い社員を幸せにしていきたいというのが、同社の願い。
「いなかに残り、木材の仕事に就いた若者に生き生きと働いて欲しい。大手に就職した人と同じぐらい幸せに暮らせるよう、安心して働ける場を作りたいと思っています。木を通して、社員を大切に育てていきたいです」