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多摩産材事業者インタビュー

先祖から受け継いだ森を守り、伝え、活かしていく

東京都森林組合

東京都の面積の約40% は森に占められています。こう伝えると、「え? 東京に森なんてあるの?」と驚かれることもしばしばですが、東京都の西部、多摩地域には約5万3,000haもの森が広がっています。

手を入れないと荒れてしまう東京の森を整備し、守っている人々がいます。そんな山林のプロが集う団体が「東京都森林組合」。

同組合は約2,600人の組合員から構成されています。東京都には明治時代から地域ごとに森林組合があり、山林の所有者たちが力を合わせて山や森を守ってきました。2002(平成14)年に6つあった森林組合が合併して、現在の東京都森林組合が設立されました。

その後2017年には、東京都にあったもうひとつの三宅村森林組合が解散し、東京都森林組合連合会の事業を東京都森林組合が包括継承し、現在に至っています。

多摩地域の山林の歴史を紐解くと日本の近現代史と重なります。明治、大正時代には筏(いかだ)を組み、多摩川や秋川を使って大田区の六郷まで材木を運んでいました。

関東大震災の復興にも多摩産の木材は活躍したといいます。

戦前までは広葉樹の自然林が広がっていた多摩地域ですが、第二次大戦中には国からの要請を受け、木材の供出が行われましたが、戦争が終わると、豊かだった山々は裸になり、後に国策によって、成長の早いスギやヒノキが植林されていきました。その作業には戦争から復員してきた人々が従事したといわれております。

昭和40年代ごろまでは建築現場の足場として使われる足場丸太が大量に取引されていましたが、単管パイプの使用による需要低下に加えて、1980(昭和55)年をピークに国産木材の価格が低迷を始め、林業にとっては厳しい時代を迎えます。

時代の流れに翻弄されながらも、戦後の荒れた山林を守り、森林の多面的機能を維持管理し、地域と共に多摩産材を育ててきたのが東京都森林組合です。

都民が飲む水や空気は東京の森や山の恵みです。普段は森林の恩恵を受けて暮らしていることに気づきませんよね。森や山の大切な役割を皆さんに伝えることが組合の仕事のひとつです」と話すのは同組合の齋藤孝専務理事。

森林の大切さ、森の循環の重要さなどについて情報発信をするのも組合の責務です。組合では地域のイベントや、都心で行われる展示会や行事に参加し、東京の木に触れ、親しんでもらい、木の良さに気づいてもらえるような活動を行っています。

森の循環を守る

山林での作業は危険と隣り合わせ。急斜面での作業など、一瞬の気の緩みが命に関わることもあります。

「作業に携わっているのは22歳から75歳まで幅広い年代がいます。映画を観て森林の仕事に憧れて入った若者もおり、若手も少しずつ増えています」と齋藤さん。

自然の中での作業は時に過酷を極めます。都心から比べると多摩地域の冬場の気温は5℃低く、標高が高くなる山場では、平地よりさらに5℃は低くなるといいます。厳しい寒さの中で行われるのが枝打ち作業で、座って休むと凍えるほど。

夏場に行うのが下草刈り。朝4時には山に入り、お昼までには作業を終えないと熱中症の危険があります。

「現在、樹齢50~60年のものが多く、木を伐り、若木を植えて、循環させないといけません。山の仕事に携わる人も50~60歳代が多いのですが、作業員も幅広い年齢層が必要です。山の仕事は気象条件も厳しく、3K(キツイ・キタナイ・キケン)の作業ですが、若手にこの仕事の魅力も伝えていきたい」とメンバーは話します。

山林の仕事も時代と共に変化し、ドローンを使い、資材や苗木などの運搬も行われるようになりました。ドローンの操作の資格を取るなど、若手の活躍も見られるようになっています。

自然に調和した多摩産材を使ったウッドレールも

都市部における木質化が求められる中、多摩産材のスギを使ったウッドレールが好評です。

「横木は木材、柱の中には鋼材が入っていて、化粧木を施しています。防腐、防虫加工も行い、耐久性もあります。ウッドレールはあたたかみが感じられるので、風景にもやわらかくなじみ、見る人の心も和らぐと反響も上々」と須﨑久則総合企画部部長。

組合ではベンチやバリケード、工事用看板などオーダーメイドで受注生産を行っています。多摩地区の森林を整備し、守り、情報を発信し、多くの方に多摩産材の魅力を伝えたいと熱い思いを語ってくれました。

  • 東京都森林組合:イメージ1
  • 東京都森林組合:イメージ2
  • 組合長の木村康雄さん:イメージ
    組合長の木村康雄さん
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