多摩産材事業者インタビュー
保存技術で屋外耐久性向上国産木材の景観づくりに貢献
株式会社ザイエンスザイエンスという社名はギリシャ語のザイル「木」、英語のサイエンス「科学」、アンビエンス「環境」から構成されています。人と地球の未来のために、高度な科学と木の持つぬくもりや優しさで、豊かな環境づくりに携わりたいという思いが、そこには込められています。約100年に渡って積み重ねてきた木材保存技術を強みに、木材の長期有効利用を目指す会社です。
明治期、木の電柱や枕木を製造、販売する事業から始まり、1922(大正11)年、最初の防腐工場を竣工。通信、鉄道、電力などのインフラ整備需要の増加と共に防腐処理された木材を使った電柱、枕木の需要も大きく拡大していきました。
1965(昭和40)年、加圧注入処理土台「PGスケヤー」の本格的な生産、販売を開始し、防腐防蟻土台の市場に事業を拡大していきました。防腐防蟻土台は、今でも同社の主力事業となっています。
1977年、中国自然歩道の整備工事に同社の防腐木材を使った東屋やサインなどが採用されたことにより、公園施設、景観土木施設といったエクステリア分野を手掛けるようになります。
「当社では木の持つ美しさや特徴を活かし、環境面への貢献も考慮しながら長期的に木材を活かすという木材保存処理技術の開発を続けてきました」と同社リーダーの川内重信さんは話します。
木材保存技術と共に
同社では公園施設、景観土木施設には、多摩産材をはじめとした国産のスギ材、ヒノキ材に、自社開発の保存処理剤「ペンタキュアECO30」を加圧注入処理した木材を使用しています。
国産スギ材、ヒノキ材は無処理の素材のままでは、屋外に設置した場合、3~5年で腐朽しますが、注入性状が良いため、加圧注入処理を行うことで、耐用年数は15~20年と、無処理材の約4倍になります。
ペンタキュアECO30は無色で、木材の風合いを残した仕上がりとなります。JISK1570のAZNAに該当し、成分はヤシ油原料のDDACに加え、防腐と防蟻成分を強化した薬剤であり、屋外での耐久性が期待出来ます。
「公園市場は20年前ぐらい、維持管理の面から木材から鉄や人工木材が主流となっていましたが、ここ数年は変化が表れています。木材の積極的活用を促す補助金や森林環境譲与税がはじまることも追い風となり、屋外空間でも木材を利用したいというお客様が増えています。環境問題、CO2削減の課題などからも、木材が注目されており、当社の保存処理木材によるエクステリア製品が貢献出来ると考えます」(川内リーダー)
多様な商品ニーズに設計から製造までの一貫体制で対応
同社の強みは、木材の保存処理だけでなく、自社で製品の設計、製造、販売、施工まで一貫対応出来る点にあります。同社の扱うエクステリア商品は遊具、東屋、ベンチ、サインなどの公園施設。柵、木塀、デッキ、木道、木橋などの景観土木施設と多岐に渡ります。これらは規格品だけでなく、お客様の要望や現場状況に合わせた設計、製造が可能です。
使用する木材は、地産地消の観点から地場産材の活用も盛んです。東京都では多摩産材を使った木製遊具や景観土木資材、板塀が増えています。
木育にもつながる木製遊具は耐久性だけでなく、遊具規準に適合させるなど安全性にも配慮。自然歩道の整備などに使われる木道や柵などの景観土木資材は現地に合わせた製品を施工するなど、多様な商品ニーズに対応出来ることが特長です。
なかでも近年は板塀(木塀)が注目されています。2018(平成30)年大阪府北部地震によりブロック塀が倒壊し、被害が出た例もあり、東京都を中心に板塀の木質化が進んでいます。
同社も東京都の納入事例として、東京都が策定した「国産木材を活用した塀等設置のガイドライン」の標準図の板塀を墨田5丁目運動施設、住宅供給公社発注の都営住宅などに納入。また都立高校の五日市高校、清瀬高校、杉並工業高校には、プールの目隠しとして多摩産材を使った板塀を納入しました。
東京都以外の地域でも、歴史や和のまちづくり整備の観点から、木の持つ景観性を活かした、板塀を多く納入しています。
「多摩産材を使った木製エクステリア商品ならお任せ下さい。営業・設計・製造の一貫体制でお客様のニーズにお応えします。保存処理によって国産木材の耐久性が屋外においても格段にアップしますので、CO2の長期固定化が出来ます。SDGsの課題解決にも貢献していきたいと当社では考えています」(杉本取締役部長)