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木材を活用する専門家たち

特集03

山からの声①

山からの声①:イメージ

村をあげてタッグを組み、
皆様に檜原村(ひのはらむら)の森の恵みをお届けする

山と木々に囲まれた檜原村で、若者だけで林業を営む株式会社東京チェンソーズの青木亮輔氏。新たな取り組みとして「檜原村木材産業協同組合」を立ち上げ、世代や業種を超えた連携を始めた。「檜原村の人と森林資源を活かし、東京の街を木のぬくもりで包み込もう」と意気込む青木氏にお話を伺った。

青木 亮輔:イメージ1

檜原村木材産業協同組合 代表理事
(株式会社東京チェンソーズ 代表取締役)

青木 亮輔Ryosuke Aoki

1976年生まれ、大阪府出身。1999年東京農業大学農学部林学科卒。2006年、東京チェンソーズを創業。森林整備事業や木材販売事業を中心に、「東京美林倶楽部」「森デリバリー」などの新規事業も展開。檜原村木材産業協同組合代表理事の他、檜原村林業研究グループ「やまびこ会」役員、一般社団法人TOKYOWOOD普及協会理事を務める。ツリークライミング®ジャパン公認ファシリテーター、日本グッドトイ委員会公認おもちゃコンサルタント。

製材現場:イメージ

森林の活用を目的に各企業が連携

檜原村は、島しょ部を除く東京都で唯一の「村」ですが、面積の93%が森林という地域です。人口も2,200人を切っている小さな村なので、この森林を活用しなければ、この先、立ち行かなくなるかもしれません。そこで檜原村村長を筆頭に、これまでバラバラに仕事をしていた各企業が、「横のつながりを強固にして、連携して仕事をしていこう」と檜原村木材産業協同組合を立ち上げました。

例えば、お客様から1社に木材を使用した大型案件の問い合わせがあったとき、樹種や量の問題でその社だけでは対応出来ない場合、通常ならお断りするということで、終わってしまいます。ですが、そこに横の連携があれば、複数の会社が組むことで対応することが可能です。

ビジネスチャンスを逃すことなく、きちんとお客様のニーズに応えられるような体制を作らなければいけない、ということで、協同組合を立ち上げようという話になりました。

参加している企業は、林業会社、製材所などを中心としていますが、林業や製材業だけに限ると、幅が広がらないため、異業種、特に村外の企業とも一緒に連携しています。村外の企業でも、檜原村の木に関心がある、檜原村の木を使いたい、檜原村の森林を空間として活用したいなど、是非一緒にやりたいという企業様にも入って頂きました。木材の生産から製材加工、木製品のデザイン、木質系バイオマス利用まで、木に関するあらゆる分野のスペシャリストが集まり、異業種連携で幅広く活動しています。

林業現場:イメージ

木に関するあらゆる分野の
スペシャリストが集まり、
幅広く活動しています

村長の発案から始まった組合づくり

当組合の設立は2018年の1月です。もともとは、うちの会社(株式会社東京チェンソーズ)で、檜原村が天然乾燥場を整備した土地に材木をストックしたいと思って、村長に「貸して欲しい」とお願いに行ったことから始まりました。すると、「1社に貸すのは難しいので、もっと仲間を集めて組合みたいなものを立ち上げてみたらどうか」という話をされました。そういえば、確かにこれまで縦の連携はありましたが、横の連携はありません。ちょうどいいきっかけだと思い、村長の発案に乗ることにしました。

同じ檜原村で懇意にしている野村材木店さんと相談して、どうせやるのなら横の関係だけではなく、さらに異業種とも連携しようと、どんどん話が進んだのです。

外構材やノベルティにもMADE IN HINOHARAを

協同組合の活動実績としては、村で整備した天然乾燥場の運営を行っています。天然乾燥には時間がかかりますが、木が本来持つ油分が抜けにくいため、木材に粘りと艶(つや)があり、香りも残ります。山の大切な恵みである木の良さを最大限に活かすため、じっくり時間をかけて乾燥させています。

また、木材の用途や状況によっては人工乾燥が適している場合もあります。組合では、お客様のご要望、木材の用途やその時の状況に応じて、人工乾燥材の提供もしています。

2021(令和3)年オープン予定の「檜原 森のおもちゃ美術館」の建設が進んでいますが、当組合で建設用の檜原産材の受注を承りました。

新しい案件では、「中央区に檜原村の木材で木製ノベルティグッズを作りたい」というご提案がありました。そこでフロンティアジャパンという国産木材を使ったレーザー加工によるノベルティを手掛けている企業に、新しく組合に加入して頂きました。村内の工場で製作した「MADE IN HINOHARA」の木製ノベルティグッズが中央区に納品されます。また、そのグッズデザインも、組合員の中でデザインが出来る若手が担当しています。

製材所もあるので、ウッドデッキなど外構材の実績もあります。寸法さえ決まっていれば、すぐに納品出来ると思います。実際、檜原村の公衆トイレや公共の木塀などに材を納めました。

(左)木製品(右)ノベルティグッズ:イメージ

都心に近く、足を運べる林産地に是非お越し下さい

檜原村の最大の特長は、都心から近い林産地ということです。木材生産の現場、製材現場、加工現場がすべて村内にありますので、これから木を使おうと思っている都心の設計士さんやデザイナーさん、クライアントさんには、是非檜原村へ足を運んで頂きたいと思っています。一緒にご案内しますので、森の現状、加工の現場を見て頂いて、理解を深めてもらった上で、お使い頂きたいです。

檜原村は、都心からのアクセスがいい産地ということもありますが、たくさんの方に来て頂いておりますので、受け入れ態勢も整っています。当組合は、異業種連携ですので、様々な刺激、知識、情報が入ってくるきっかけにもなりますね。

場合によっては、組合に加入して頂いても嬉しいです。都内に事業所があって、当組合に入って連携をしたいという村外の事業者の方がいらっしゃいましたら、是非お問い合わせ下さい。

檜原村の公衆トイレ:イメージ
公共施設の木塀:イメージ